つとめて/藤原絵理子
降る雪の間に間に後姿
灰色に滲んで 小さくなる
誰も開いたことのない 図書館の古びた新刊書
端末はいつもいっぱいで 書物は忘れ去られる
早朝のバス停で
凍えながら待っている
寄る辺ない思いは 白い息を吐いて
ようやく明け始めた暁の色に励まされる
そんな朝は
フランス組曲のオルガンヴァージョン
ライプツィヒの路面電車を思い浮かべる
川辺の土手で俯いて 淀みに映った自分を眺めて
恋をする 寒気に凍りついたホースのため息
葉を落とした樹のてっぺんで アオサギが踊る
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