夜、月へ出る/ふく
 
物音がくねる様子が見えたので、私は月に出る
ざあと、見えない穂が空を舞い、星になるようで

この目が最大に映せる範囲まで、目の端を脳で感じる
紺の空のもと、私に垂直な道は、捉えられないほど遠くに延びている
襟元をしっかりと右手で握り締め、放射冷却の空気を歩く
人工の明かりのない原っぱを左右に、目の端には誰もいず
ざくざくと月へ

何のために歩いているのかわからなくなる寒さ、夜
何のために歩かせているのかわからない足、道
月が前にあるのでそこに行く

私は月に出る
私は月に出る

私は月に出る

白の雪は夜に変わり
風は夜に休んだ

私は月に出る
戻る   Point(0)