文学の社会的機能/葉leaf
 
にしている。それで社会がうまく回ることが非常に多い。組織の論理や法の論理によってトラブルはシステマティックに処理され、人間の実存が登場する暇などないかのようだ。
 だがそれはもちろん社会の表の側面である。社会の裏の側面では個人の愛情や憎しみや喜びや傷が渦巻いている。社会的な出来事は個人の実存にダイレクトに衝撃を与え、それが個人の存在そのものを揺るがす。だが、この表の側面と裏の側面の間をうまく調停することは可能なのだろうか。一方では、効率性や結果を重んじる物質的でメカニカルな社会というものがあり、他方では理屈では説明のつかない人間のカオスのようなものがある。もちろん、社会の原理には個人の原理もまた
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