文学の社会的機能/葉leaf
社会は個人に対して物質的で不条理であるというイメージが強い。あるいは社会は個人がその役割を果たすことにより自己実現するステージであるという積極的なイメージもある。だが、積極消極いずれに解するにせよ、個人と社会との関係はおおむねパブリックなものとして扱われる。そこに個人の存在そのもの、実存というものはあまり登場しないかのようである。むしろ、個人はきれいにコーティングされ、化粧を施され、一つの無難な商品として取引されているかのようなイメージがある。
社会の中で人々は、己の本心をさらけ出すことも少なく、トラブルがあってもマニュアル通り処理され、感情の表出や親しい交渉をなるべく避けるようにし
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