流れる/藤原絵理子
 

秋の長雨 落ち葉を濡らす
行き場のない 人知れず孤独な
悲しみの樹 痩せた枝先に
溜まる涙に宿った光 いくつも


泡沫になる 紅蓮の炎
静けさの夜に 音もなく揺らめく
穢れた肉を焼き尽くしたら
涙も乾いて 清浄な白い骨が残る


虫の音も止んだ 夜更けに
ひそやかに昇る月 雲が流れる
華やかに燃えた恋の記憶は 墨絵の闇に


淀みにいくつも 雨粒が描く
流れゆく輪の重なり 紅いもみじは沈んで
つがいの鴨は泳ぎ去る 未来の方角へ

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