ただ悲鳴をあげている/まりょ
ただ悲鳴をあげている
これだけの脆さにひざまづいた
霧に沈んだ街
ただ温かいだけで
どうしても泣きたくなる
人ごみはゆるやかに
混ざり合っていくけれど
どうにも関係のないことばかりだった
たのむから
お前は愛されているなんて
言わないでください
街中が光っていく
並べられたりんごのように
ごまかしだらけで
どこへもいけないから
冷たい階段に
座り込んだ
うなされる夜は特に
ふざけて笑いあった日々だけが
ぐるぐるまわっては
水槽の中で溺れている
ただ淋しいのを
ただ淋しいとは
言えない
傷付けて 傷付けて 傷付けて
わたしはいつになったら傷を負うだろう
どこも痛まないのに
ずっと悲鳴を上げている
こめかみに手をあてると
命が流れている音
ああ
わたしがいなくなっても
誰も泣かなければ
いいのに
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