そのような 澄みきった真実/いねむり猫
私のメガネのレンズは いつも薄汚れて 曇っている
ポケットに入れた手が掴んでいる しわくちゃのハンカチでも
はーっと息をかければ 少しは明るくなるのに
足元は
山深い森の落ち葉
深く 深く 山を 覆い
雨を吸い 腐って 寒さに乾き
また新たな 青葉と紅葉を積み重ねる
私の足は 山に包み込まれて どこからが足なのか わからない
どこまでも 柔らかな 戸惑いの中を 歩いている
いつか
すべての葉をふるい落とした
たくましい けやきの樹の
四方から空間を 掴み上げる 太く険しく素直な 枝ぶりのように
冬空の青に くっきりと浮き上がる 真実が
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