冬の池/藤原絵理子
風が悲しいため息をつく
かき曇った空に 葉を落とした大木の影黒く
烏が鳴く 惨めな輝きを目に宿して
閉ざした扉は 誰かが叩くのを待っている
開き果てた花薄は 干からびて
土の中で息づくものたちを羨む
澄んだ秋の夕照に華やいだ 記憶は薄れて
青い月の冷光に沈んでいく 色褪せて 暗い水底へ
うすっぺらい飾りを落とせば
身軽な白い骨になって うつぶせに
枯野の陰に横たわれるのに
冬の扉は 乾いた憂鬱を閉じ込めて
誰かが足跡を残すこともない 落葉の小径の奥
閉ざされたまま凍って 忘れ去られる
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