雑踏変化/北村 守通
 
思い浮かべるのだ
野川の
せせらぎが
耳の裏に
聞こえてくるのだ
けれども
高知にいるということが
大変幸せなことだということも
わかっているのだ
そうだ
私は
幸せなはずなのだ
豊かな釣り場がそこにある
豊かな食材に囲まれている
豊かな空間に囲まれている
しかし
私は知らなければよかった
なくすとわかっているのならば
持つべきでなかったのである
それでも
私は
知ってしまった
それでも
私は
触れてしまった
私は
愚かであった
私は
愚かであった
私は
愚かであるべきだった
私は
道を何度も踏み外していた
何度も
何度も
何度も踏み外していた
私は
故郷に顔向けが出来ないでいる
二つの故郷に
顔向けが出来ないでいる
私は
叫べずにぐっとこらえている
私は
ずっと一人ぼっちでいる
囲まれているがゆえに
一人ぼっちでいる
一人ぼっちでいる
一人ぼっちでいる

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