年越しの瞬間/葉leaf
 
年が切り替わるとき
静かに消えていく光がある
それは生命の光であり
同時に死の光であり
いわば書き残された光である
時代は人々の生の蓄積とともに
わずかな地殻変動を繰り返し
そのうちの最も小さい地殻変動が
年をささやかに切り替えていくのだ
そのような抽象的な法則に抗うように
私は具体的で生々しい人生に流され
書き残したはずのものは次々と色あせ
初めてで新しい経験で飛躍を続ける
この社会の鬱蒼とした森の最奥には
きっと桃源郷があると
どんな体制かはしらないが
きっと桃源郷があると信じて
未来へと広がっている障害物を
越えては書き残し繰り返していく
年越しという抽象的な刹那に
具体的な人生の何が宿るかについて
私はすでに書き残してしまった
そしてそれはすぐさま光を失い
私は新たに光をともすため
歴史と文字とをつなぎ続けるのだ

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