玉川上水/高橋良幸
た
今の若木が将来そびえるだけの年月
僕は知らずに託していたのだ
それは偶像のようなもので
くぐり抜けることができるもの
時間のトンネルに喩えられるもの
ベージュ 絨毯
黄金 冬の玉川上水
再び歩き始めると背後の落ち葉は
その勾配を少しずつ崩れて
歩く一歩先を埋めようとしてくる
勾配が終わった場所で
いつも僕らは暮らしている
それは一年草が枯れていく場所だ
あなたが生きていて
僕も生きている
けれども一緒に過ごせる時間は
こんなに短い
今年も一年をひとくくりにしようとする番組が
いつの間にか歌合戦になっているはずだ
言葉が知っていること
よりも体が知っていること
のほうが多くて
そのためにまた、書き記してしまう
万物の理を僕らは体現し続けているのに
今年もまだ計算を終えられずにいて
かといって、歌う歌はいつでも正しい
そうだ、歌え、歩け、口ずさみながら
東京からトーキョーまで歩く人間をくぐらせていく
並木道が僕らの希望の拠り所だ
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