憐憫とかぼちゃのパイ/這 いずる
柚子の白い綿をつみあげて
ふう、と吹いて飛ばした幻想
あずきをひとつひとつ積みあげて
空っ風に突き崩された夢
かぼちゃを練り込んだ生地のパイ投げをする日
誰もいない日常は
白く白く光ばかりさえている
眩しくて見ていられない
みんなの背を追いかけているようで、
追い越されているようで
それでいて淋しくなったり悲しくなったり
して
だからと言って
決して
決して先を行っている人を
決して素直に、すごい、だなんて言えやしない
うらやましい、とも思えない
自分の中にある渦巻く情を
はみ出せもしないこの日常に
捧げ
憐憫と後悔のパイを食べて飲み込んだ
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