ヘンゼル/まんぼう
 
ふたりは手をつなぎ
パンくずを撒きながら
黒い森に流れていった

小鳥のように木漏れ陽は揺れ
遠くの海を目指して歩いたけど
僕は正しい方向を知らなかった

ヘンゼル
森の魔女を殺しましたか

立ち止まらない時間のなかで
美しさも愛も
辛いだけだったね

君は大人の女となって
僕も大人の男になって
今日はあんなに遠くまで行ったねと
夕暮れの残照の中を帰っていった

ヘンゼル
物語は終わりましたか
あっという間だったね
永遠なんて

遠い海から波の音が聞こえ
夜空にはあんなに大きなクラゲが
浮かんでいる
今夜僕は一人だけで歩いて往きます

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