ごめんなさい/もっぷ
 
栞をはさんで閉じようとした
歳時記が
本を押さえても平らにならない
抵抗している何かが居る

、それは直感だった
それが何にせよ傷をつけて
可哀そうなことになったらと
まず案じて、本からそっと

手を離した
歳時記の(案の定)冬の部から
繊細な雪の結晶がぱらぱらと
わたしの一人きりの部屋に

舞い始めた 本の隙間から
上へ 下へ 右へ 左へ
四方八方を自在にその
白い繊細は(しかも)

何かを言いたそうにもしている
これは聴くべきだと
そう直感したので
瞬きの一つすらしないよう

わたしは じっとした

毎日は楽しいかい
毎日しっかり食べているかい
毎日そとへ出かけて
写真はあれから上達したかい

父さんだ 父さんだ 父さんだ!

暦に気づいてみてみると今日は
命日だった 父さんの
命日にわたしは人生で最後の読書に
歳時記を選び

父さんの 命日も 忘れるほどに わたしは


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