ある一夜/こん
ねもんだ。
しっかし、でっけえ手術だったっけのお、
医者が言ったっけ、「こどもなんかできねぇべ」
だとさ。したっけ嫁なんか来るわけねえべさ?
四十過ぎてまで何回か見合いしたどもな、ながながさ。
それがそんころで言えばの、嫁き遅れ、のかあちゃと
一緒になることになったべ。茶だんすとちゃぶだいしか
ねがったどもな、かあちゃが嫁にくる前の日によ、
ボロ布で磨いたもんだ。それなりに光るもんでの。
んだ。 やっぱ嬉しかったのう。
(ピッチャー振りかぶって投げた、
打った、高い高い高い、いったーっ
サヨナラです、サヨナラホームラン!)
声が遠ざかる
窓にまだ若い母が映っており
パジャマの私にもう寝なさい、という
もっと話を聞きたいのに
もっと もっと・・・・
*
医者にも見放されていたのに
姉と私が生まれた
なのにさいごのほうは
時々私のこと
知らない子のように見てたね
愛するひとたちに会えましたか
空のうえの
父よ
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