トッカータ/管城春
見えない形の城で 空 盲目と呼ばれる娘に
冷凍された落葉樹 火 季節を希むことさえ)
やめた
あなたは融けだして
穏やかに染み出して
もういいかな まだだめかな ゆるしてくれるかな きえさるのかな
冷徹なまなざしで 終わらないものを探して
声をかければ ほころぶように笑う
あなたはくさっている
土の上に広がる 虫たちにキスされる鎖骨
爪の間のとても やわらかいところ
育ってゆくものたちが 根を張って 愛のようにむさぼってゆく
あなたに根を張る生命
春の中に溺れている
躊躇なく雨が降る
やがてくすんだ記憶も崩れさる
衝動的に死をなぞった夜と歌も
見捨てることすらむつかしかった憧憬も
消えることはない
目を瞑っても
暗闇の形をしてそれはいつもやさしい
わたしたちの多くが消滅してゆく朝や
痛み
掠れ朽ちることばの儚さも
思い出でいい
深まってゆく速度で
きみは透明な疾走を続けてゆく
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