箱姫/這 いずる
冷たいモルグの中でじっとしている
後悔の跡の中で
溺れ死なないのは
彼女を見ている目があたたかいから
人にまで暖かさを分け与えるあの子の陽の
おかげと知っているのに
妬んでいるのは私の心の弱さより
陽に照らされる彼女の赤いほおは
気の明るさに満ち満ちていて
なんて私の青白さと違うのだろう
陽のあたらない冷たい箱より
見つめて視線を送るのは私の腐らせた心より
きっと気分の問題
冷たい廃棄物処理場の壊れた人形の目から落ちるガラス片
キラキラと反射して火を照らしかえしては
反発している
壊したのはだあれ?と問いかける子の声がした
それに堪(こた)えられないのは私の落ち度ではないはず
ずっと続かないものに価値がないって
意味のないことばかりだと片付けていった
こともあり、なくもあり、
そんなこともあって
ああ、あの時に返してほしいと心のうちで言って
やっぱりぎゅうと押し込められた箱でじっとしている
無縁の存在
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