飼い主のない猫/AB(なかほど)
三丁目の角を曲がったところでふと
君の匂いを感じたとき
なんてことないと思っていたのに
電子レンジに卵を入れて
しばらく眺めてから取り出し
破裂するかどうかを少しだけ考える
あれと似ている
子供がもらってきた風船は
気付かないうちに
しぼんだ姿になっていくはず
それも似ている
なにげない風に吹かれて
キジムナーに憑かれたら身震いするんだよ
ってそれ武者ぶるいっても言うんだけど
これも似ている
何気ない言葉で
それで
傷付いたり笑ってしまったりできればいいのだけれど
何気なく通り過ぎた言葉と
何気なく通り過ぎた風がつついて
忘れていたような
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)