墓石/たけし
 

均衡は崩れている
もうとっくに

地面の空の裂け目から
鮮血に染まった手を伸ばす人、人、人
同情でも訓戒でもなく
ただ助けを求めて



独り冷え切った身体を震わせ
汚れて無垢なるその瞳を見入れば
曇天、空が割れ
落ち広がる黄道
この吉日に
異様に平然と続く世界を後に
あなたはもうとっくに此処を抜け出し
色付いた街並みの上を
飄々と飛んでいるのか

見事な光沢放つ黒御影
堆積した記憶の壁となり
時流と共に凝固し立ち塞がる



在ることの謎を忘却した世界を
人格の尊厳が通り過ぎていく
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