さよなら青から/水町綜助
ぐるり50センチほどの脳裏にある
あの日の、その場所に
もう行くことができない
がらんと口を開けた
灰色の校舎の入り口に立ちすくみ
背中からは夏の午後の日差しが
人の形を
ひびたコンクリートに切り抜く
入り口の奥から
息をのみ
白目だけをひからせて立つ自分の
やけにつめたい瞳の黒を、
白目だけを見ることで
逆説的に見ている
校舎を両脇から覆い隠すように
おい繁る深い緑の鬱蒼に
相反してさざめく木の葉が壁面に落とした
まだらな影の涼しい残滓が
ゆれながら空気に流れていく
空洞のなかには
いくつも穴を開けたベニヤ
その端々はささくれ
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