季節のない世界/ゆきむし
 
膜に被われた部屋で
日に日に神経だけ鋭くなり
哀しみはいよいよ深くなった
わたしは季節を忘れた

今年も春とやらが来て
幻影のような夏が大きな雲とともに
流れて去った
過ぎた日をそこに重ねただけの
意味のない季節もまた過ぎ去り
その堆積に圧迫される
また来る季節に意味などなく
その瞬間ごとに生まれ続ける
祝祭のような時はもう訪れない
花のように降る雪のような
わたしのかけがえのないあの日は
どこかへ逃げてしまった
そして気配もなく冬はやって来る
焦げたままのこの部屋に

新しい季節が来たなら
一面白く染まった視界の端が溶け出し
光が生まれる景色を
わたしはもう一度だけ見たいと思う



戻る   Point(2)