鳴きやまない夜に/千波 一也
 


一本の木がいくつもあるから
枝はかぞえられなくて
そこにしがみつく葉も
かぞえられなくて

一陣の風がいくつも吹くから
音はかぞえられなくて
ただでさえ見通せない夜ならば
音は
聞き分けられなくて

正体の
あらわにならない無力さが
夜に飼われて鳴いている

無限というものを
否定しうる一つ一つは
無限というものを
肯定しうる一つ一つと呼べなくもなくて

この身に代わる夜があろうか
この身にまさる夜があろうか
この身に負える夜があろうか

降りやまない夜に
いくつもの一つたちが鳴いている






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