キネマ劇場のふたり/wakaba
 
たうちまわって絶叫曲芸
妖艶な声を枯らして笑い叫ぶ貴婦人
それにつられて笑う君と僕

めくりめくる照明暗転

大玉に踏みつぶされるピエロ
ゆらり揺らめく桜花爛漫
赤ワイン片手に咳き込み笑う男爵
頬を合わせて笑い合う君と僕

目まぐるしい白痴の螺旋が君と僕との間で渦巻いていた

このお芝居が終わらなければいい
この時間が果てしなく続けばいい
そしたら君と僕
永遠に笑い続けていられるから
ふたり心の底から幸福を賞味できるから

だからまだ少しの間だけ
手を握ったままでいよう

終劇まであとどれくらいだろう
幸福なふたりのままでいたいのに
終劇のあとは何処へ向かえばいいだろう
ふたりもう帰る場所なんてないのに
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