黙ってみている青い空/るるりら
彼女の名前は、林檎といった
日がのぼり 日が沈んで どんなときも
心に 一つの凛した樹、それが林檎だった
パオバブの木は 特別な木ではなく
桜の木は 花見のときだけが桜ではない
桜は落ち葉落すとき 桜の花の匂いがして
悪い蟲を遠ざけていることや
どんな平凡な木も それぞれに思議の力を蓄えていることを
林檎もまた 知っていた
林檎たちの住まう園に
ある日 盲人たちが訪れた
ひとりにひとりつづ目の見える者を従えている
同じ林檎でも味や香が違うことを目の見えるものが説明していた
踏み台にのぼり 枝の高いところの実と低い所の実の違いを語ってい
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(15)