はじまり/葉leaf
 
、本当は挫折してしまいたい。孤独にも連帯にも負けてしまいたい。そのようなはじまりの気持ちを閉じ込めて、私は社会を生きているのだ。
私は職場で同僚と談笑しながらも、まだ何もはじまっていないことを知っている。社会の水中を魚のように器用に泳いでいるうちは何もはじまらないのだ。宇宙と宇宙とをつなぐ通路で、少年がそのジレンマに耐えきれず悲鳴を上げるとき、そしてその悲鳴が言葉となり思想となり音楽となり、既にあった社会制度にわずかな振動を与えるとき、何かがはじまるのだ。
私ははじまりにおいて孤独に負け、はじまりにおいて連帯に負けている。孤独と連帯の両方に負け続け、仕方なく閉じ込められてしまうこと。この社会や歴史に参画できない儚い命を今までのように抑圧せずに、一瞬だけ爆発的に解放したい。そこからが私の人生のはじまりだ。私の人生はまだはじまってすらいなかったのだ。

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