世界は冬の夕方/左屋百色
どのような世界に住めば
窓の向こう
詩を書くこともなく
比喩など使う必要もなく
あなたに
花や
歩道の水たまり
そのままに
伝えられるのでしょう。
いつか見た
夕方に降りはじめた雪
おぼえていますか、
あなたの花は
あなたの世界で
まだ咲いていますか、
私は
私の世界でならば
誰よりも速く走れます
お許しください
言葉では
もう何も
伝えられはしないでしょう。
世界の残響は遠すぎて
冬の夕方は冷たすぎて
いちだんと美しいのに
それなのに
私の足は速すぎて
風景が歪んで
もうどこにも
あなたが見えない
雪が
すべてとけて
春が
ゆっくり来たとしても
世界は冬の夕方
きっと私には
もう二度と
あなたが見えないのでしょう。
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