路傍の一生/這 いずる
 
【10/24】
スマホを眺めながら犬の診察を待っていた
出てきた先生は犬は死んだと言って
ああ、そうなんだなと思っただけで
可愛がっていたはずなのに
犬は気難しかったから
私に懐かなかったし
って言い訳して
大して悲しくなかった自分をなぐさめた

この世以外に行った犬をうらやましくは思えども
前々からなんとなく居た犬だったから
心に一滴のしずくをも落とさないまま
死んでいった犬
その死は私の影を濃くして

【7/7】
さみしいままでいた自分をなぐさめるのは
物でしかなくて
人や感情は、あっという間に私を通り過ぎていった

産んだ我が子に愛情のかけらを捧げど
[次のページ]
戻る   Point(2)