緋のマント/千波 一也
 


夕日のみえる高台で
ぼくはきみには背を向けない

だれかの家路を
見下ろすぼくには秘密が多い

赤面してもわからないから
夕日にそまる高台は
告白するのに都合がいいけれど
ぼくはきみには背を向けない

きみに向けない背中には
勇ましいマントがあって
それは
確かに夢のためのはずで
確かにぼくだけの物のはずで

夕日のみえる高台で
ぼくのマントはきみにはみえない

笑われそうな
こころをかばうように
ときどき風が言葉をさえぎる

ぼくにはきみに
嘘つきにすらなれない







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