チューしてあげる/島中 充
が狂った、ヒが狂った。低能のヒが狂った」ぼくも、キがヒになった。ぼくはひっくり返った。尻餅をついた。あわてて向き直り四つん這いになり、鉄砲玉のように教室から飛び出した。立ち上がって一目散に廊下を走った。椅子を振り上げたままケイコは廊下を追ってくる。ぼくは上靴のまま運動場へと逃げ出した。運動場の一番隅にある砂場まで来て立ち止まり振り返った。ケイコは運動場までは追って来なかった。廊下の端で、振り上げた椅子の座面を頭にのせたまま砂場のぼくをにらんでいた。そして椅子を頭にのせたまま、もとの教室へ帰って行った。ケイコの哀れな後ろ姿をぼくは会心の笑み浮かべながらながめた。やっと仕返しをしたと誇らしい気がしたの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)