即興(散歩)/香椎焚
 
浮かんでいく
重さのないように


太陽に向かって歩く
空に向って歩く
今日は温かいので良い
明るいので良い
ゴム手袋が、パントマイムではしゃぎだす
私の手術をほっぽって
だからまだ動かない器官がある
忘れることがある
金網のせいでピンぼけしたホームに
責任のない言葉がフラフラと漂う
それは記録にないこと
正しさも何も、
美しくもないこと
今日は影送りをしているにんげんが多い
映った影はすぐに消えて
家々だけが残される


月に向かって歩く
毛布にするには弱すぎる温度
足音を立てないように歩く
月よ、足掻けよ
おごそかな門灯にゆらめく理性が
人のかなしみは美しく
憎しみは醜いという
それでも私は彼を消したい、さやかな夜に
その訳を明かしても
やはり嗤われるのだろうか
クラシックを聴いている
後始末、これ以上
どんな事実で何を責めても
云えることはただ一つ
いっそ消えたい、
それだけなんだろうが


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