既視の岸辺 (四行連詩)/乱太郎
 

表意文字同士で手を繋ぐ駅裏の小路
休んでいいかいと言った少年の姿はもうない
弦楽器の音合わせに
五本の指は小さな画面の上をひた走る


青年は手を自由にし煙草に火をつける
再び繋ごうと手を戻すと空を切るばかり
そう記すしかないと悟って不在の文字を捜す
つまり音合わせは捗っていない


何もかもが混沌と散らばっているようで
青年の肉体でさえも煙となって遊離し始めてきた
文字は青色に掻き混ぜられ
意味のない音が街中に捨てられていく


表音文字同士が手を繋ぐサンセット大通り
往年の大道芸に拍手喝采の夢から落ちて
老人の手から滑り落ちた葉巻が床を焦がしてゆく
さて五本の指がひた走るのは


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