スミノフ、ウォッカ/崎山郁
 


   たくさんの街が存在すること


   昨日 仕事帰りに職場の人と飲みに行った
   焼き鳥屋の二階 座敷に座った
   最近知り合った人たちは
   それぞれに可愛かった
   まだぎこちない会話を並べた食卓で
   こころのこりをつまみながら
   隣の人は 私生レバーが一番好き と
   ビールを飲みながら言う

   最近考えることはたくさんの分岐点から派生した
   可能世界のことばかり

   今日 仕事帰りに友達と待ち合わせた川で
   お昼ご飯を食べた
   空が広がる芝生のベンチの上で
   友の眼にうつった自分を見ている

   たくさんの私が存在すること


   書き出す為の衝動が
   苦しみ続ける今を必要とするなら
   私は拾い続ける為に
   たくさんの大切なものを
   放棄していかなければならないかな

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