拝啓 きみがいた世界へ/笹子ゆら
拝啓 きみがいた世界へ
あんまりにもあっさりと消えてしまうから、
わたしが困ってしまったことをきみはしらないでいるだろう。
電話口でそれを知らせた、きみの友人の泣き声を聞かなかったろう。
葬儀の前に集まった人々のどうしたらいいのかわからない表情をみなかったろう。
明るくつとめてくれたきみの父親と、終始泣き崩れていた母親の姿をしらないだろう。
ねえ、きみはあんまりに多くを一気に手放してしまった。
それでも人々は普通に営みを続けていく。
きみの友人たちも日常をつぶやき続けている。
あの時泣いていたことも嘘みたいに、楽しそうで、わたしは少し悲しいのは、
わたし
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