廃屋で待つ/本木はじめ
 
ずっといるからずっと見ている


一筋の光おにぎり握るごと握り潰してしまおか悩ま な い


小洒落たカフェから出てくる美脚に時間が追い付かない




ゆうとうせい


ポツポツと夜を逃がして人々が今日もひかりと共に在る朝


懐かしい歌をあなたが口ずさみ思い出すひとあなたじゃなくて


僕はもう青空殺しの雨男レインコートに無数の涙


灯台は鬼 立ち尽くしたままぐるぐると永久に誰かを探し続けて


羽ばたきもしない翼をもぎとって果実のような過日を疎む




秋から冬


観覧車どっと外れて転がって巨人の指輪となる夢見てる


冬の午後ピアノの中で昼寝する誰かが弾くたび背中が痛い


誰ひとり降りないバスに揺られつつ歩道を歩く僕を見ている


旧姓の頃のあなたの面影が見え隠れする夜の校庭


美しい黒いコートで嘔吐するひとを見ている美しい冬


真四角なタイルが並ぶレストランだったのだろう廃屋で待つ







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