文書/葉leaf
 
ら隠遁しようとした罪で事務所の地下に拘束されている。囚人に科された刑は、私の書いた文書の文字を残さず呑み込むというものであり、社会の躍動する熱の苦痛にずっと耐え続けさせる刑である。
囚人は盲目になりたかった。ただ美しく組み立てられた夢だけを見ていたかったのである。囚人は孤独になりたかった。ただ立ち入り禁止の部屋の中で黙想していたかったのである。囚人は歳をとることを禁じられた永遠の子どもなのである。
だがある日、囚人は刑期を終えた。囚人はそれまでに呑み込んだ社会の交易の本質をつかみとり、みるみる大人になり、きわめて有能な職員となった。そして、囚人は私の上司となり敏腕を振るった。
事務所は次の囚人を確保し、今度は別の刑を与えようとしている。今度は経験を積み過ぎた職員から社会性を抜き取るための刑だ。私の文書は再び利用され、囚人の中に溜まり過ぎた文字を吸い取る役目を果たすそうだ。囚人はいずれ私の部下になる予定である。文書と刑罰は切り離せない。




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