水溶性キネマ(ゴル投稿)/百均
 


●か行の女の子のために


旅の扉


〇かこ


東京の映画館だからといって、年がら年中人が入っているわけではないと知ったあれは、小さなタワーの地下であまりにも有名な映画を何度も作り直した映画。僕はその顛末を既に知っていたし、多分他の人も知っていたから、その日、土曜日の、春の日差しが、冬の作られた、暖かさを温め直すような、薄着で出かけたあの日、その日、誰もいない映画館のホールの真ん中に座って、分かりきったサスペンスを、ジュースを飲みながら眺めていた。女の子が水に落ちれば良かったのに、落ちなかった。男は水に浮かんでいた。女の子は発砲音を戸棚に突き刺したまま、警察だ。女の身
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