別名/オダカズヒコ
短く鋭い溜息が
ぎゅーっと聞こえてきたよ
まるでドアーの開閉するような
その音は近づいてきたよ
目撃者によると
十秒おきに
ぴぴっと電話に飛びつき
ぼくは救急車を呼んでいたという
裸足の心をかばうものもなく
電話の向こうの誰かに向かって
叫んでいたってよ
歯が痛てぇ
半端なく歯が痛てえと
叫んでいたってよ
救急車はとうとう来てくれなくて
歯痛くらいじゃ国家は動いてくれないって
もっと特別な用事じゃないとね
「 」どちらかというと
そいつはヤスリをかけたように痩せっぽちで
よじ切れた小麦の束の様であった
ぎっしりと詰まったカバン
もしや
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)