別名/オダカズヒコ
 
短く鋭い溜息が
ぎゅーっと聞こえてきたよ
まるでドアーの開閉するような
その音は近づいてきたよ

目撃者によると
十秒おきに
ぴぴっと電話に飛びつき
ぼくは救急車を呼んでいたという
裸足の心をかばうものもなく
電話の向こうの誰かに向かって
叫んでいたってよ
歯が痛てぇ
半端なく歯が痛てえと
叫んでいたってよ

救急車はとうとう来てくれなくて
歯痛くらいじゃ国家は動いてくれないって
もっと特別な用事じゃないとね
  
「  」どちらかというと
そいつはヤスリをかけたように痩せっぽちで
よじ切れた小麦の束の様であった
ぎっしりと詰まったカバン

もしや
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