四丁目 ―ボビー・コールドウェルの夜―/もっぷ
 
うらはらな気持ちで聴いている
ボビー・コールドウェル
さっきまで泣いていたのに
自分は ほらもう大人でしょう
むりやりな確信を強いて
あしたは床屋さんでショートにしてもらうの
あきれた決意が笑っている
きっとまた 泣くのでしょう?
耳元で囁く もうひとりのわたし
夏の陽気な陽光にすら雪げないほどの 遠く
記憶のかなたに塗れてしまった
ひとりの少女を追いかけて
何にすら間に合ってはいないと
悟(し)っていながら なぜか
後悔の波は こころには打ち寄せない

……本当は
(あてもなく言葉にしてみる)
いくつもの穢れないさよならばかりが
よぎる
いくつものあどけない忘れ物ばかりが悔やまれる
大人でしょう
もう大人でしょう
……好きでここまで来たわけじゃない
けれど
手に入れた たくさんの権利たちが
救ってくれた日々もあったはず
手に入れた、

手に入れた……


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