本を育てる/即興ゴルコンダ(仮)時間外.76/こうだたけみ
「本」という字は一画ひくと「木」になる詩、育てるからには木からと思い立って種を買う。なんの木だか知らないけれど窓辺に置いたプランタへ植えて水をやる。「水」という字に一画たしたら「氷」になるから水やりは夜をさけて。「日」に当てれば「目」が開くだろうかなんて頬杖ついて眺めていると、「日」と「月」がおにごっこして明ける夜。よる年波には勝てぬとうたた寝してる間に、雲のまにまに伸びていっては目覚めるころには枯れている。育て方が間違っているのでしょうか。木は未だ本を実らすことなく未完成、こぼれた種を拾いながら行く末など思う。末は博士か大臣か。身になるならば詩人がいい、わたしは。
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