時間を売って報酬を/マゼンタ
 
庶務課午後3時47分
繊い太陽ゆらゆらと 
甲板に整列した水兵たちは屈託ない笑顔で手を振り 敬礼
西の方角へ おちてく ああ、
不幸不幸不幸なわたくしの
わたくしの儚い夢は瀕死です 

彼の四肢はジャコメッティでできていて
今日を分断して切断した遮断機の音が
あまりに早すぎて切れ目ない一音にきこえる
さらにこまかく 賽の目状に転がって
数字を積み上げていくうち
彼はたいそう立派な樹木になる

側溝の名もない魚 魚になりたいなら彼を抱くが
彼の名は「森」だった というのも幻想

椅子に正座して不幸を自慢しつづけるわたくしの
左手に強く握った 光が
眩しすぎるのも策略で
首筋からはどくどくと粘りけのある血液
のような 汗 

真正面のガラス窓に映る わたくしよ 
やる気などさらさらないのだろう
安い音をたて 転がり落ちる カッターナイフ
さしずめキーを打つことに専念
前任者の打ち癖に舌打ちなどして コンマ半角



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