ヘンドリックと青い空/オダカズヒコ
湿気を含み
じりじりと指先に迫る煙草の火のような不快な暑さが
ぼくたちのクーラーのぶっ壊れた車内を
熱によって歪ませていた
「この夏の異常な暑さ」
と
ラジオの気象予報が繰り返し注意を呼び掛けていた
高速道路は帰省者たちの車で埋まり
ちょっと近所に遊びに行くだけの
ぼくらの時間まで奪っていく
その暴力的な非論理によって
都市的な風景を
ひそやかな不安によって
重層的かつ無根拠な宙吊り状態に置き
そしてそれによってぼくらは車内から真っ青な空と
どこまでも膨らんでいく入道雲を見上げながら
昼食までの憂鬱な時間を過ごさなければいけなかったのだ
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