こずえ/
遙洋
双眼鏡はふしぎ
ふたつのレンズをのぞくと
遠くにひとつ
鮮明な領域をもつことができる
だれにも知られないように
とても早い朝に
わたしは森にでかけていって
観測小屋にはいって
そらにひらけた木々の梢をのぞく
わたしのための領域に
何かとびこんでこないだろうか
息をひそかに
けれどこない
ただ、甘い色の光でいっぱいの楕円の中に
透明に風にゆれる、
だれにも笑われない場所でただゆれる、
青枝がうたっているのを見るばかり
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