部屋に宇多田ヒカルが流れていた頃/番田 
 
食堂で
回鍋肉を食べた
冬の夕暮れ それから 自転車をこいで 私は
私の思うどこまで走ってきたのだろう 


レンガの 友達のいない講堂の前
広場で 予備校時代の知り合いの横顔を見かけた 
錆のついたコンクリートの壁を見ていた 昼間
私はいつも小川の脇道を走って帰った 


実家に私は帰らなかった
休みの日の帰り道は人気がない 
私がこれだけの休みを取ったのはいつぶりだったのだろう
荒れ果てた道を立川へ 学生だった頃私はよく歩いていた


鉄工所の前 安アパートの窓に 私
自転車をこいで 学校に向かっていた あの頃
水色のシャツを着ていた あの頃の 私
好きなことを一日中考えていられた私の横顔

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