旅/葉leaf
 


秋の日
歴史上初めて空を見上げた人類のように
清々しい気持ちで空を見上げる
できることなら
人類の歴史を全てやり直したい
毛筆で描かれたかのような雲が見え
空は余りに明るいので
あの光の圧力で砕けてしまいたい

旅行く者は
目的地のさらに先へ行くことを求めている
旅は確定した目標へ向かうという
人生の縮図などではなく
目標に回収されない種々の余剰にこそ
真の目標があり
ルーチン的人生観を破壊してくれる

線路はどこへつながっているのか
線路が途切れる場所において
更に線路はどこを目指しているのか
敷設されなかった線路は
旅の余剰そのものだ

こんな美しい秋の日とは心中しても構わない
年老いて死ぬのなら
こんな秋の日がいい
だが死ぬのは秋の方
旅から帰れば
この純粋な秋の核は死んでしまい
淀んだ秋の装いだけが白々しく残る

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