16歳の夏休み/即興ゴルコンダ(仮)投稿.73/こうだたけみ
16歳の夏休みは一度きりだって知らなかった私たちは秋大(会)に向けて稽古していた言葉が生まれる前の原始時代の物語をヴィヴァルディの「四季」に合わせてあーとかうーとか言ってジタバタした春夏秋冬春と巡って60分キッカリだったから時間オーバーの失格になることはまずなかったし舞監もストップウォッチ放り出して全力で稽古してたねあれはもう顧問のトラウマだって思う過去に一度失敗しているからさ一日五食だってちっとも太らなかったのは若さのせいじゃなく運動量が多いせいで台詞を喋れないというだけで役者はこんなにも体を動かすのかハリボテの柱を重そうに運ぶ春から始まり横暴な権力者と平伏す民の夏に収穫を祝う秋のお祭り騒ぎと勇敢な男の反乱の冬そして春、一人の女から初めて語られた「すき」という言葉。なんちゃって全国大会の舞台を踏むチャンスは高二だけだったなんて知ってたからってどうせ県大会止まりだってわかっちゃいるけど16歳の夏休みは一度きりだったんだってこれ期末に出るってよねえ先生が言ってたし。
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