怪獣がすきだった/千波 一也
 

怪獣がすきだった

一生懸命に敗北へと向かう
その信念がすきだった

破壊される街も
逃げ惑う住民も
どうせフィクションだから
心配には及ばない

それなのに
怪獣の優勢が劣勢へと移行すると
それがお決まりのパターンでも
どうせフィクションでも
不憫でならなかった

ぼくは
どんな大人になれたかな
ヒーローだなんて柄ではないし
悪役に徹するほどの美学もない

怪獣がすきだった
ただそれだけは確固たる足あとで
疑いようもない信念だ







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