呪文(チ・・・チンチン…)/Six
ワインのグラスがまた
チ・・・チンチン…と鳴った
何度でもいいから
もっと鳴らそう
綺麗なウムラートの発音が
出来そうだし
挨拶をしたら
知らない人も微笑み返してくれるだろうし
外を通る人たちが残らず
わたしたちの窓を
覗き込むのでしょう
全ての謎が解消される
その瞬間に
わたしたちは立ち会っているというのに
再び謎がぷつぷつと生まれてくることを
誰も止めることができない
笑顔がまだ少し
残っています
ワインも少し
残っています
次から次へと生まれてくる謎を前にして
本当は少しだけ狼狽しながら
わたしたちはそれぞれの椅子に座り直す
ワインを飲み干すために
グラスに口をつけ
微笑み方など思い出してみる
今はまだ
いちおう魔法使いのつもりでいます
戻る 編 削 Point(1)