わたしたちはうつくしい城にいた/凍湖(とおこ)
 
わたしたちはうつくしい城にいた
記憶の赤い海の上にあり
そびえるさまは誇らしく
ひとつの羅針盤として分かちあっていた

それは夢だった
海底に白く折り重なった無数のひとびとのみる
夢であり、祈りであり、墓標でもあり、約束だった

それは大陸にあって
砂ぼこりにまみれた同朋の身を包む
厚いマントになった
それは境界にあって
思うところはあっても
お互いに門をひらき
行き来をする鍵となり
隣人へのまごころの証になった

ああ、それがあったからわたしは撃たれなかった
鉄と火薬をアイーシャやハリムの頭上に落とす共犯にならなかった
悲しみと憤りによって、花を供えること
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