戦争と平和/紀ノ川つかさ
できるものだろうか
彼らは何をしているのだろう?
彼らは戦っているのだ
真実はここにありと彼らは叫ぶ
しかしその真実は単に
自分が真実と思ったものは誰かに伝達し
真実と思わなかったものは誰にも伝えなかった
その蓄積に過ぎないのではないか
遠い過去の戦争でも
きっと人々はそうしていたろう
「真実」ははじめからもうできていて
それに合うものだけを残してきて
それだけが周囲に満ちていて
それが増強されるたびに「真実」も厚みを増し
人々は高揚していくのだ
気持ちよくなっていくのだ
戦後その「真実」とやらが
すべて間違いだったことに気づかされる
彼らは何をして
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