そうやって僕は何回目かの/オダカズヒコ
をくれる彼女の手が
ぼくに手向けられた唯一の言葉だった
彼女
辞めたよ
なんで
疲れたんじゃない
まさか
あんなに仕事
頑張ってたのに
ぼくには
一言もなかったよ
だってお前
あいつと親しかったっけ
男と
女の間には
二人だけで交わした会話の中に
暗号を紛れ込ませているさ
秘密のような
スパイスのような
ちょいとしたやつをさ
アンテナにびびびと
響くやつさ
花奈がお前のせいで辞めたって
会社を
仕事を
思い上がりもいいとこさ
だってお前
花奈より一回りも上だぞ
みんな知ってたって
花奈がお前のこと好きなの
だけどお前はどこ知らぬ顔
時々
花奈のやつをおちょくって
遊んでただけだろ?
そうだろ?
人の心を弄んで
罰が当たるぞ
止せよ
俺だって
悩んでんだ
あんな綺麗な子の人生
俺だって
そう簡単には
背負いきれないさ
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